【ナイトウェディング2016】第3回:これぞオトナのBGM!サウンドで彩るナイトウェディング
パーティーの演出には、実は音楽(BGM)がとっても重要。全体のムードを高めたり、ゲストの感情移入をしやすくするなど、ニクイ働きをしてくれます。ナイトウェディング連載第3回のゲストは、こだわりの音響表現をプロデュースする『Sound Couture』主宰のYasuharu Okochi(以下Haru)さん。パーティーを格上げする音づくりについて伺いました。
連載2018.7.31 更新2016.4.20 公開
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目次
当日の“まとまり感”を左右するのは、実は音楽!
First Dance / b0bbyriggs
会場の高揚感を生み出したり、演出や空気に一体感を持たせてくれる音楽。たとえば、素敵な映画やドラマは、どこで曲が変わったかわからないほど自然に場面へなじみ、そのムードを盛り上げていますよね。入場や乾杯などの曲以外は適当に選んでしまいがちですが、ポイントとなる音響演出を際立たせるためにも、パーティー全体を彩るBGMが重要です。
「シーンごとによい選曲と各シーンのレイヤーができれば『場面は切り替わっているけれど、パーティーという大きな物語がつながって進んでいる』という感覚を生みます。ナイトウェディングを選ぶ新郎新婦は、ご本人もゲストもアソビを知っている方が多い。雰囲気と食事にマッチした音楽があればみんなとくつろげる、ということを心得ているのです」と、サウンドスタイリストのHaruさんが教えてくれました。
同じ曲でも、音響やテンポの調整でぐっと違いが出る
たとえば、こちらの動画は同じ「Valery」(Amy Winehouse)という曲ですが、BPMとアレンジが異なるため、まったく印象が違います。
こちらは着席のパーティーの前半や、乾杯の準備中などの上がりきっていないテンションに合いそうなイメージ。
こちらは、盛り上がってきたパーティーの後半やテーブルラウンドなどにマッチしそうです。
次は、有名な「カノン」のギターアレンジを比べてみましょう。ガーデンでのナイトウェディング、新婦の入場シーンを想像してみてください。
こちらは、さらりと新郎の手を取り、笑顔で入場するイメージ。
コード進行も楽器もほぼ変わらないのに、BPMがゆったりするだけで、とてもセンチメンタルな雰囲気になりました。こちらはお父様とゆっくり歩いてくるような入場にぴったりです。
パーティーを格上げする音楽づくりで大切なのは、選曲だけではありません。同じ曲でも、音の高さや速度を調整することで、まったく違う効果が生み出せるのです。たとえばテーブルラウンドのときは、新郎新婦の歩く速度や会場のテンションに合わせて、曲のBPM(テンポ)を調節。パフォーマンスとサウンドが合致して、より一体感が生まれます。
「音響の調整がとりわけ効いてくるのは、歓談中のBGMでしょう。ポイントは、会話がちゃんと聞こえるようにすることです。女性のゲストが多い場合は、女性の声と同じ中高音の音域を弱め、ベース音などの低音域を少し強める。そうすれば音楽が流れている高揚感はありつつも、女性の話し声と混ざらず、会話の邪魔になりません」(Haruさん)
“映画みたい”なパーティーを作る音響の役割
BARN_DANCING_23 / Massachusetts Office of Travel & Tourism
音楽は、料理で言えば全体をまとめる“スパイス”。目立つドレスやお花と違って省かれやすいけれど、パーティーが持つイメージをふくらませたり、ゲストが新郎新婦の気持ちに感情移入をするうえで、とても重要な役割を果たしています。実際にHaruさんのサウンドスタイリングを利用した新郎新婦からは「曲を選んでいる段階から想像していたより、こんなにも空間にマッチさせてくれるとは思わなかった」「まるで映画のなかに入り込んだみたいで、本当に幸せな1日でした」といった感想も。
ナイトだからこそ、魅力が引き立つ音響
夜景や照明に合わせた曲を使う
Clem & Clyve Wedding 2013 – 62 / Kyle Taylor, Dream It. Do It.
美しい夜景やライトアップも楽しめるナイトウェディングには、ジャズやブルージーな曲がしっくりハマります。「その音楽ジャンルが生まれた背景などを踏まえると、精神性の高い曲は夜のほうがマッチする」と、Haruさん。昼間には流しづらいムードたっぷりな曲や、雰囲気はあるけれどちょっと地味な曲も、ナイトならちょうどよく効いてくるのです。
また、聴覚が研ぎ澄まされる夜は、昼間より音が耳につくことも。ゲストも音楽の影響を受けやすくなるため、場面になじむセレクトや、うるさくならないための調整といった細かなカスタマイズがより大切になってきます。
ナイトに合う音楽の選び方って?
Neff_1334 / daveiam
ナイトウェディングの“非日常感”を忘れないのが、最大のポイント! たとえば、普段から有線などでよく流れているヒットソングは、音がゲストの耳に入りすぎてしまい、ハレの日の雰囲気を楽しむという気分が半減するかもしれません。カフェのオープンテラスが似合う曲も、せっかくのナイトには爽やかすぎるかも。
「ハマりやすいのは、ジャズやボサノバなどのコンピレーションアルバム。代官山の蔦屋やタワレコといった音楽好きの集まるお店で、店員さんに相談するのもおすすめです。パーティーをする会場や時間、雰囲気、好きなジャンルなどを伝えれば、高確率で素敵な曲を探してきてくれます。また、年配のゲストはBGMの音を大きく感じがちなので、うるさく思われてしまわないように、懐メロを仕込んでおくのもいいですね」(Haruさん)。
とはいえ、ゲストは音楽を聴きに来ているのではなく、新郎新婦をお祝いに来てくれているもの。選曲には、自分たちも楽しめる範囲で気を遣えばOK。神経質になりすぎる必要はありません!
細かな調整をプロにお願いする“サウンドスタイリング”
一般的なブライダルの音響係は、決められた曲をプログラムどおりに流すのが基本です。それにプラスアルファして、空間に音楽をなじませるためのさまざまなカスタマイズをしてくれるのがサウンドスタイリスト。通常の音響演出よりも打ち合わせなどの準備期間とコストはかかるけれど、こういったプロの力を借りるのもひとつの手です。
たとえば、大好きな曲がちょっと明るすぎて、ナイトの空気には合わないとき。流すシチュエーションを上手に選んだり、違和感がない他の曲に挟むことで雰囲気をグラデーションさせてなじませるなど、プロならではのテクニックが光ります。核となる曲以外にもさまざまな音素材を準備して、当日のムードに合わせて即興でミックスしてくれるのもうれしいところ。
「新郎新婦の想いやコンセプト、テーマカラーなどを詳しく伺って、ベストな音を作っていくのが僕らの仕事です。さまざまなパーティーを手がけるプランナーさんやMCさんからも『サウンドスタイリングが入ると、迎賓から送賓までのBGMがしっかりとまとまり、感情移入しやすくなる』と好評をいただいています」と、Haruさん。
ナイトウェディングというこだわりのパーティースタイルを選ぶなら、同じくらい音響にもこだわるというのは、ひとつの選択肢になりそうですね。
音響のポイント
- 音楽は、パーティーの“まとまり感”や“空気感”を左右する
- 同じ曲でも、場の雰囲気に合わせて音の高中低や音質、音の広がり(エコー)、速度を調整することで、違いが出る
- 夜景に似合うムーディーな曲など、ナイトウェディングだから使える音楽も
サウンドスタイリスト ハルさんプロフィール
Yasuharu Okochi
音楽とファッション、音の空間演出と映像美を探求するサウンドスタイリスト。ラウンジを中心に、サロンの空間音楽やWebサイトのイメージ音楽制作、パーティーやレセプションの音楽プロデュース、ハイウェディングのサウンドスタイリスト&DJ/音響演出家として活動。2013年よりウェディングパーティーBGMをもっとお洒落にするべく、コラボレーションしているCLASKAやTheWorksなどの会場を中心に、アンダーズやグランドハイアットといったホテル系も含め、年間30本以上のウェディングサウンドスタイリングを手がけている。
「ゼクシィPremier」(2月号)のLGBTウェディングコーナーレポート掲載。CLASCAウェディングイベント(4月29日)、青山スパイラル「マルシェフォーウェディングvol.4」(8月27日、28日)にてサウンドスタイリング&DJを予定。また、デザイナーやクリエイターが集まるウェディングのポータルサイト「Craftman Park」(http://craftsmanpark.com/)や自身のInstagramアカウント(https://www.instagram.com/yasuharu_okochi/)でも、ウェディングBGMのヒントなどをあれこれ発信中。