「敷居の高さをなくしたい」真珠ジュエリーを身近に感じてもらうための工夫
「“真珠ジュエリーは冠婚葬祭などフォーマルなシーンで使う高貴なもの”、そういった真珠に対する固定観念を打ち破りたい」。そう語るのはクラフトマンの保坂成美さん。 彼女が手がけた真珠ジュエリーはトラディショナルなデザインとは一線を画した、非常に繊細で斬新なアイテムが多く、若者を中心に人気を集めています。新しい真珠ジュエリーの概念を生み出す、次世代を担う若きクラフトマンの保坂さんにお話を聞きました。
【PR】日本ジュエリー協会2019.10.3 更新2019.10.3 公開
目次
真珠を扱うクラフトマンの仕事とそれにかける想い
クラフトマンの保坂さん
私は簡単なデザイン画から地金にパールを取り付ける作業まで幅広く担当しています。
まずはマーケットリサーチをして可愛いと思ったジュエリーや最新トレンドを押さえておきます。そこからイメージを膨らませてオリジナルのデザイン画を描きます。完成したらそれを持って原型を作るクラフトマンに相談し、作品を作ってもらうんです。
私は真珠が持つ一つの側面であるかしこまった印象をなくしたくて、手に取りやすい価格とデザインを目指しています。そのため、真珠の連のネックレスのような重厚感あるデザインもよいですが、一粒使いでもおしゃれが成立するトレンド性あるデザインを重視していますね。
実現性などをクリアしたら、地金を鋳造し、磨いて検品に出します。このように本体が完成してから、最後に真珠付けを行うんです。
パールをセットさせるための芯にお皿をろう付けし、穴の開いた真珠を差し込み、接着・硬化させ、本体と真珠を固定させます。
真珠付けが最後の工程なのは理由があって、それは真珠がとても傷つきやすいからなんです。そのため極力触れる回数を減らすようにしています。真珠ジュエリーの一番の主役ですから、大切に取り扱っています。
繊細な真珠ジュエリー、緊張が走る一瞬とは
真珠はデリケートなので様々な面で配慮が必要ですが、真珠に触れたら必ずジュエリークロスでぬぐい、ピンセットでつかむときは傷付けないよう先端にシリコンを挟んでおきます。真珠を本体にセットする芯の形状もパールの穴の大きさ深さに合わせ、強度も高めるために芯自体の太さも変えています。
真珠ジュエリーの修理も高難度。真珠ジュエリーを修理する際は、一旦パールを商品(本体)から外し、修理をしてから再度パールをセットします。
芯が長すぎてパールの下から芯が見えてしまったり、芯が短すぎて強度が低下したり、微調整が発生することもあります。
本体の素材(色見)によって、パールも色、形、大きさの一つ一つを厳選し、セットしたときにどの角度から見てもパールがきれいに見える商品を心がけて日々開発しています。
20代のクラフトマンだからわかる、若者に求められているデザインとは
アコヤ真珠のイヤリングとネックレス。流線型のデザインは揺れ方が独特で美しい
ここ数年、繊細なデザインに人気が集まっているように思います。華奢な地金に小ぶりなパール一粒とか、女性らしくて素敵ですよね。
例えば、この“線モノ”のアコヤ真珠のイヤリング。地金を含めて全体的に揺れるデザインなのですが、静止していても動きを感じる不規則なカーブが個性を演出してくれます。
最近はピアスホールを開けない若者も多いから、このようなイヤリングに力を入れています。耳たぶが痛くならないように地金にシリコンを挟んでいるタイプのご用意も多いです。滑り止めにもなって良いんですよ。
また、耳たぶの厚さに合わせて地金の幅を調整できるものだと、つける箇所を選べる楽しみもあるんです。
リングでも地金のサイズを調整できるつくりにしておくと、気分によって違う指に付け替えることも。1つで3つの見せ方があるような、印象を変えられるジュエリーも多いのが傾向としてある気がします。
やっぱりそこそこ値段がするものだからこそ、あらゆるシーンでも対応できる使い勝手の良さを大事にしています。
真珠の美しさは1つじゃない。あえてエクボを見せるデザインも
最近はアーティスティックなデザインも人気に
真珠って同じように見えても、サイズや色味、テリ具合など、一つ一つ違うので、地金のデザインにあった真珠を選んでいます。特に色のバランスは重要で、例えばシルバー系の地金なら白系の真珠を合わせるなど、全体のトーンは色の合わせ方で決まると言っても過言ではありません。
また、デザイン的にあえてエクボ(自然にできた小さなくぼみ)がある真珠を選ぶことも。それはカジュアルに見せる意図があります。冠婚葬祭のパールだったらなるべく使わないんですけどね。でもエクボを個性として捉えたとき、その独特な風合いがオリジナリティとして生きてくるんです。
私は若い人に向けて作っているので、なによりファッション性を重視しています。ですから、こういった型破りな真珠を主役にすることもあるんです。
手が届く真珠ジュエリーを目指して
ご褒美ジュエリーとして購入可能な価格帯のジュエリーをたくさん作って、真珠の敷居を下げ、誰でも使えることを伝えていきたいと思っています。これからもあまりかしこまらず、さらっとつけられるようなデザインを展開していくつもりです。
それでも若い人からすると値段もネックなので、そういう意味では一粒のパールジュエリーからはじめて見るのがいいかもしれません。
最近は指の腹に“隠れ真珠”があるリングなど、遊び心に富んだデザインも多いので、ぜひ宝飾店に足を踏み入れてみてくださいね。
保坂成美。貴金属業界の工場で3年勤めた後、2016年に日本ジュエリー協会会員社入社。若者向けのデザインをメインにデザインから製造まで行う。